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素直クール修学旅行


放課後、疲れきった男に声をかける。
2人はあの後担任から
「御前らが一番俺の言うことをわかってくれている!二人で修学旅行委員をやってくれ!」
と言われ、放課後の会議に参加させられていた。難儀な事だ。

「友人よ、すまなかったな。それで、親睦会のほうはどうなった?」
「んー、確定しているのはオレと男とクーさんだけだな。一応ツンとシュー、オレの班の2人には駅前でカラオケやるよとは話しておいたけどさ」
「2人?後1人はどうした?」
「モクーさんだっけ?うーん、俺あんまり話したことなくてさ。モクーさんもあまりクラスのやつらと話したがらなそうだし。ホームルーム終わったらすぐに部活いっちまったから、次の機会でいいかなって思ってさ」

自分の席に座ってぐったりする男と対照的に、イキイキとした表情を見せるクーさん。
クーさんってこんなに表情を見せるヤツだったっけ?オレと話していてもちらちらと男の方に視線移すし。
なんか男が憎らしいわ、蹴ってしまえ。

「いてっ、何すんだよ」
「知らん、自分の胸に聞け」


自業自得とは言えないかもしれんが、クラスの男代表として蹴ることは問題ないだろう。
なおも軽く蹴り続けるオレに対してクーさんが話し掛ける。

「すまない、二度手間になるかもしれないがモクーを呼んできてくれないか?」
「んー、パスしたいなぁ。モクーさんて文芸部でしょ?オレは本に囲まれると圧迫されている感覚がするんだよ。それに男のオレよりクーさんが呼んできた方がいいと思うけど」
「いや、キミでなくてはダメだ。頼む」
「マジで?……あっ!オーケーオーケー、そういうことね。んじゃ行ってくるわ。御両人ともお幸せに!」

まったく、クーさんも男と2人っきりになりたければそう言ってくれりゃいいのに。
告白は直球でしたってのに、こういう所は奥ゆかしいんだな。
ささっと行って断られて、空き教室で時間でも潰すか。

#
文芸部、主な活動は規約によれば毎年16ページほどの文芸冊子を文化祭で発行する事らしい。
そして、今年の文芸部員は一名。モクーだけ。
やっぱり中に入るのはキツイなぁ……モクーしかいないんじゃなぁ……
まぁ仕方ない、クーさんが誘えっていったんだしオレは任務を遂行するだけさ。

「すいませーん」
「!!」

ドアを開けた瞬間バサバサッと大きな音が鳴る。
部屋の中を見渡すと驚いた顔のモクーさんと、その足元に散らばった本の数々。
モクーさんはおかっぱ頭で身長は低く、眼鏡をかけている。
いつも休み時間は本を読んでおり、誰かと話しているのはまったく見た事がない。
なのでモクーさんの声を聞いたこともないと言ってさしつかえないだろう。


「うわ、すまない。驚かせちまったか」

膝を折って本を拾おうとするモクーさんを急いで手伝いに行く。
ぱっと見てモクーさんの抱えている本の量と散らばっている本の量を足すと、とてもじゃないが持ちきれる量とは思えない。
モクーさんが片手と胸の間に挟んでいる本をひょいと取り上げる。

「これ、どうするの?」
「あ……そこの本棚に……」
「ん、わかった。それじゃオレ詰めていくからバケツリレーっぽく渡してくれ」
「う……」
「どうした?」
「ありがとう」

人と面と向かうのが苦手そうな見た目とはうらはらに、モクーさんはオレの目をじっと見つめながらありがとうとつぶやいた。
その目は純粋、少なくともオレの生きていた中で最も綺麗な目をしていた。
小さい口から紡がれる声変わりもまだかと言わんばかりの高い声は、オレの胸の鼓動を高ぶらせるには充分だった。


そんなオレの態度を気付かせまいと黙って作業をする。
全部片づけ終わると、モクーさんはオレに椅子をよこしてお茶を入れてきてくれた。

「ん、邪魔してすまなかったな」
「ううん……ボクの背じゃ届かなかったから、助かったよ」
「ぐっ!?」
「お茶、熱かった?」
「い、いやちょっと変な所入っただけだ」

漫画の中じゃありえることだが、まさか本当に自分の事をボクと言う女性がいるとは思わなかった。
しかし、なんというかモクーは『私』というよりも『ボク』と言ったほうがしっくりくるかもしれない。
理由は……ほら、まだ未成熟と言うか……な?
そんな思考を続けているとモクーさんから質問がきた。


「何かボクに用事があったの?」

そうだ、本題をすっかり忘れていた。
モクーさんにカラオケに行くかどうか決めてもらうんだった。
モクーさんには悪いけれど、さっきまではモクーさんがこないほうがラクでいいかなと思っていた。
でも、今はそんな事を考えてはいない。むしろ一緒に行きたいくらいだ。

「そうそう、うちら合同班って事にしたじゃん?それで親睦会って事でこれからカラオケいこうって事になったんだ」
「カラオケ……行ったことない」
「それじゃなおさらだ。一緒に行かないか?」
「……誰がくるの?」
「うーん、それがオレと男とクーさんの3人なんだよ。他のヤツラは全員用事あるってさ」
「そうなの……」
「そうなんだ。どうよ?」

モクーさんは右手で顎の付近を掴み、いわゆる考えるポーズを取る。
普通は深刻そうな雰囲気をかもしだすこのポーズなのだが、モクーさんがやるとなぜか可愛らしい。
そうして10秒ほどたったか、モクーさんは口を開いた。


「友人さんは」
「え?」
「班に好きな人がいるの?」
「いや、いないよ。先生が何か言っていたけどオレは関係ないさ」
「ボクは、いるよ」
「……?」
「ボクは、友人さんの事好きだよ」

担任の気まぐれとしか思っていなかったこの班決め。
どうやら最低でも2組はカップルを作ってくれたらしい。

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