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素直クール・PD

夏休み前、最後のホームルーム。担任の木村が今年の文化祭の話をはじめた。
「来年はおまえらも受験で忙しいだろう、文化祭の思い出を作るんなら2年生の今しかないぞ!」
確かに!と、クラスのお調子もの集団が相槌を打つ。俺はどうかというと、まぁやってもやらなくてもどっちでもいい。何か店を出すようなら手伝うし、ないならないでのんびりさせてもらう。
そんな心境の俺の耳は教室内に飛び交う意見の押収をシャットアウトし、それとともに睡魔の意識への侵略開始。俺はそれを甘んじて受けることにした。

「八木沢、おまえには撮影やってもらうからな」
「は、はい!」
名前を呼ばれ無意識に返事をしてしまった。撮影?何の事だ?
「よしよし、八木沢はやるき充分みたいだな。さすが放送部、任せたぞ。次は配役だが……」
イマイチ状況が掴めない、聞いてみるか。
「なぁクー、今何の話してるんだ?」
「秀則……聞いてなかったみたいだな、今は文化祭の映画の配役を決めているところだ」
「えいが……?」
「何を間の抜けた顔している。君は撮影係だろう?しっかりしてもらわないと困る」
「マジか……」
コイツの名前は小海美久(こうみみく)
皆からはクーと呼ばれていて、俺もそう呼んでいる。身長は女子の中では高いほう、髪は艶やかな黒で一本に束ねてあり、顔は……そうだな、校内トップ3に入るだろうか。俺的には1位でもいいんだが。
顔だけではなくクーは誰とでも分け隔てなく接するイイヤツで、俺はそんなところが気に入っている。
クーのほうも俺と話すのはまんざらでもない……って感じならいいんだが、あいにくそういったことは全くない。
「今から辞退は……無理だよなぁ」
「決まってしまった事だ。よろしく頼むぞ」
映画の撮影って事は夏休み潰れるのか、バイトしようと思っていたんだけどな。
「あー、クーは何役やるんだ?ってか映画はどんなストーリー?」
あきれ顔で俺を見やるクー。
「先が思いやられるな……映画は恋愛物だ。そして私は映画には出ない」
「クーって演劇部じゃなかったか?」
「演劇部のほうでも映画を撮るんでな、さすがに2作出演はマズイだろう」
「何か規約でもあるのか?」
「規約ではない、私が決めたことだ。よほどの事がない限り出演はしない。それで係はと言うと演技指導係だな」
ふむ、まぁクーが指導するんならまずまずいい演技にはなるだろうな。去年の文化祭で見た演劇部の出し物は演技の善し悪しなんて全く判らない俺でさえすごいと思ったもんな。
「全員役割は決まったな、皆しっかりと分担された仕事をやること!解散!」
いつのまにか配役も決まっていたらしく、解散の声とともに教室を飛び出していったヤツもいる。
「秀則……前を見てみろ」
「何かあるのか?……ってオイ!俺が監督!?」
周りのクラスメイトを見渡す、全員目をそらしやがった……
「あぁ八木沢は撮影兼監督な、小海もいるから大丈夫だろ。監督っていっても連絡役みたいなもんだ、期待はしてないぞ!」
そういって大きく口をあけて笑う担任、俺自身はちっとも笑えないんだが。
「木村先生もああ言っていることだ、解散してしまったし今から変更は効かないだろう。よろしく頼むぞ」
「クー……御前少し笑ってないか?」
「ふふ、そんな事ないぞ?」
あまり感情を表に出さないクーだが、これは判る。絶対に笑ってる。周りのやつらもうまくいったと考えているだろう。
「仕方ないな…まぁ恨んでもしょうがない。やるだけやるか」
「頼むぞ監督。あぁそうだ、電話番号とメールアドレスを教えておこう。連絡できなければしょうがないからな」
「え?あ、あぁ、判った。んじゃ俺のも」
まさしく怪我の巧妙、どうやら悪い事ばかりじゃあないみたいだ。こんな形でクーのアドレスが手に入るとは!
「それじゃ私は演劇部のほうに行くとしよう。今夜連絡をいれるからな、ちゃんと出てくれよ?」
「それは大丈夫だ、演劇のほうも頑張れよ」
「もちろんだ。っと、秀則は機材の準備をしておいてくれ。なかったらどうにもならないからな」
そう言ってクーは教室を出ていった。教室を見ても半数以上は帰ったみたいだ。
「それじゃ、俺は部室行きますか……」

放送室のドアを開け中を見渡すと、ソファーにうつぶせになっている人影が一つ。
ドアの開いた音に気づいたか、首だけあげてこちらを見やる。
「おーぅのりちゃんこんな時間にどしたん?」
「録画機材を借りにきました」
「ふーん、のりちゃん彼女サンできたんだ?」
「へ?」
「あり?ハメ撮りじゃないの?」
「よりさん…酔っぱらったオヤジでもそんなこと言いませんよ……」
このやたらフレンドリーかつ頭のネジが取れているのは放送部の先輩、名前は友原より。
140cmほどの低身長から繰り出されるセクハラ発言にノックアウト者多数、噂ではファンクラブがあるとかないとか。やえばがまたいい!とか言うやからも多い。
自称放送部の看板娘で、少しやりすぎ感あふれるお昼休みの放送の顔。
俺としては結構やっかいな人だと思っているが、何故か『のりちゃん』とあだ名で呼ばれているというおかしな状況。
「そうじゃないとすると……」
「クラスで撮る映画です!文化祭の!」
「なんだつまんない。ふつーだね」
あげた顔をまたソファーに埋め込み、睡眠体制に入るよりさん。
この人は休み時間や放課後に放送室へ顔を出すとかなりの確率で寝ている。
なのになんでこんなにちっこいかな、寝る子は育つってのは嘘だな。
「なにかいったー?」
「いいえ何も?さてデジカメは何処だったかな」
軽くいなしてデジカメを捜す。確か録画機材はこっちのロッカーにまとめておいたはず……ん、あった。
「それじゃこれ借りますよ」
「あー、ちょっと待ったぁ」
ソファーからがばっと起き上がったよりさんはそのまま部屋の隅にある机へと足を運び、何か書類らしきものを取り出した。
「ちょいちょい、これに自分の名前と機材名、借りた理由とかもろもろ書いておいてね」
「あーはい、わかりました」
よりさんから書類を手渡され、机に座り書類を書く。結構書くところあるな……
「んー?共同責任者が小海サン?」
「そうですよ、彼女が演技指導で俺が撮影兼監督ってヤツです」
「ふーん……のりちゃん小海サンのこと狙ってるの?あのコ可愛いもんねー、3年の女子の中でも有名だよ?」
「な、何言ってるんですか!狙ってなんかいませんよ!」
「えー、立場的にめちゃくちゃチャンスあるじゃんよー。監督なんだから手とり足とり腰とりと……」
手をわきわきとさせながら口の端を上げて笑うよりさん。小悪魔のようという表現がぴったりだ。
「そんなことしませんよ……はい、これで書類いいですか?」
「……ん、おーけー」
一転して真面目な顔つきで書類を読み、不備をチェックするよりさん。こういった場面ではしっかりしているんだけどな……
「それじゃ、お疲れ様です」
「あい、おつかれー。しっかりやるんだよー」
少し会釈をし、後ろ手にドアを閉める。
さて明日から夏休み……どうなることやら、だ。

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